在庫管理システム提案・説明を受ける際に気を付けること

導入している在庫管理システムに不満を抱く人が、75%もいるということを知っていますか?

在庫管理システムへの不満

【現状のシステムへの不満はありますか?】

ユーザーが感じている不満の中で最も頻繁に報告される問題は、「システムが業務フローに合っていない」という点です。

なぜこのような問題が生じるのでしょうか?

そこで今回は、在庫管理アドバイザーの視点から、在庫管理システムの導入において失敗を避け、スムーズな運用までの道のりを解説します。

 

在庫管理システムとは

在庫管理システムは、企業が保有する在庫を効率的に管理するためのソフトウェアやシステムのことです。

このシステムは、在庫の受発注や移動、在庫レベルのモニタリング、在庫評価などの機能を提供し、企業が正確な在庫情報をリアルタイムで把握し、業務プロセスを最適化するのに役立ちます。

在庫管理システムを導入するメリット

  1. 在庫レベルの最適化
    在庫管理システムを導入することで、在庫レベルを最適化し、過剰在庫や欠品を防ぐことができます。
    正確な在庫情報をリアルタイムで把握できるため、需要の変動や季節性に合わせて在庫を調整し、適切な在庫レベルを維持することが可能です。
  2. 生産計画の最適化
    在庫管理システムを活用することで、生産計画を最適化することができます。
    需要予測や在庫レベルの情報を基に、生産スケジュールを調整し、生産コストを削減しつつ、需要に迅速に対応することが可能です。
  3. 顧客サービスの向上
    正確な在庫情報をリアルタイムで把握できることで、顧客の要求に迅速かつ正確に対応することができます。
    欠品や遅延を防ぐことで顧客満足度を向上させ、顧客ロイヤルティを高めることができます。
  4. 正確な在庫管理
    ロケーション管理により、在庫の場所が明確になるため、従業員が誤った場所に商品を格納する可能性が低くなります。
    これにより、在庫の記録ミスや商品の紛失を防止することができます。
  5. 在庫管理コストの削減
    在庫管理システムを導入することで、在庫管理に関連する手作業や煩雑な業務を自動化し、在庫管理コストを削減することができます。
    また、在庫の適切な管理により、保管コストや廃棄コストを削減することも可能です。
  6. 業務プロセスの効率化
    在庫管理システムを活用することで、業務プロセスを効率化することができます。
    自動化された在庫管理業務により、業務の手間や時間を削減し、従業員の生産性を向上させることができます。
  7. 迅速な物流管理
    ロケーション管理により、在庫の所在地を正確に把握できます。
    物の場所が明確になることで、商品の入庫・出庫やピッキング作業が迅速に行えるため、物流管理全体の効率が向上します。

システム導入時に気を付けるべき5つのこと

在庫管理システムの導入や入れ替えを検討する際には、以下の5つのポイントに注意する必要があります。

自動化の罠に注意

在庫管理業務において、大きな負担になっているのは発注業務です。

また、発注業務は適正在庫(欠品を防ぐ、過剰在庫を防ぐ)を実現するためにもとても重要です。

発注の自動化で一番多いのは、「発注点に達したら、自動で発注する」という「発注点発注」機能です。

自動化は非常に便利な機能ですが、その機能の性能を100%引き出すためには、適切な発注点を設定することです。

適切な発注点の設定無くして、適切な自動発注は実現できません。

ちなみ私が相談者にアドバイスする時、自動発注はおすすめしていません。

その理由は「自社の管理レベルを知る」をご覧ください。

見栄えに惑わされない

 グラフや表などの見栄えの良い機能に惹かれてしまうことがあります。

しかし重要なのはビジュアルの美しさではなく、必要なデータを的確にグラフ化、集計できるかどうかです。

ちなみに私が相談者にアドバイスする時、グラフや集計表は後から考えればよいとお伝えしています。

「設定すれば簡単にできる」に騙されない

システムの機能や設定値を簡単に設定できることがよく謳われていますが、実際には適切な設定や見直しが最も重要です。

この点を甘く見て、初期設定で大失敗したり、いつまで経っても設定が終わらない・・・ということが良くあります。

こういったことは、さらっと説明されて気付きにくいです。

ちなみに私が相談者にアドバイスする時、現状をヒアリングしてで設定値がない、設定値があっても見直しができていない場合は、導入をお勧めしません。

その理由は「自社の管理レベルを知る」をご覧ください。

デモでの見せかけに惑わされない

システム導入をするユーザーの傾向として、視覚的にわかりやすいものをスゴイと思ってしまう傾向があります。

デモでプリンタを動かして、サンプル帳票を出しただけで「おおー!!スゴイ」と歓声が上がることもあります。

しかしシステム的に考えると、帳票やバーコードを作成できる機能は便利ですが、それだけがシステムの価値ではありません。

必要な業務をスムーズに行えるかどうかを重視しましょう。

※バーコードやQRコードは、エクセルで作成可能です。

 詳しくはこちらの記事をご覧ください。(バーコードやQRコードをエクセルで作る方法

豊富な機能に目を奪われない

「あれもできます、これもできます、、」というのはシステム販売の常套句です。機能が豊富だからといって、必ずしも良いシステムとは限りません。

自社の業務フローに適した機能や使いやすさを重視し、不要な機能に振り回されないようにしましょう。

在庫管理システムで大切なのは、機能の豊富さではなく、自社の業務フローへの機能の適合度です。

在庫管理も100社あれば100通り。豊富な機能ではカバーできません。

また、実際に利用するユーザーにとっても豊富すぎる機能はかえって運用の障害になります。

その理由は、覚えやすく誰でも使えるシステムでご説明します。

在庫管理システムは、業務フローのツールであることを理解する

在庫管理システムは、業務フローのツールとして機能します。

例えば、穴をあける機械が異なる素材や穴の大きさ、生産数によって選ばれるように、在庫管理システムも業務フローに合わせて選択される必要があります。

業務フローを把握することは、システム導入の前に重要なステップです。

しかし、業務フローを正確に記述することは容易ではありません。それでも、このプロセスを省略すると、システムが業務フローに適合しない可能性があります。

自社の管理レベルを知る

さらに、自社の管理レベルも理解することが重要です。

例えば、「業務を自動化できますよ」と言われても、それを実現するためには設定やメンテナンスが必要です。

自動発注や生産計画などの機能を使いこなすには、現在のオペレーションを正確に把握し、それに基づいてシステムを設定する必要があります。

発注点を決めるには、少なくとも

  • 発注ロット
  • 発注リード

が決まっていることが条件です。

どちらか一方でも決まっていないと発注点は決まりません。また、最初に決めた発注点はずっと同じではいけません。

例えば、アイスクリームなどの季節商品であれば、夏と冬の需要は明らかに違うでしょう。

つまり少なくとも季節の変わり目に、発注点をメンテナンスして更しないと、過剰在庫や欠品の原因になります。

残念ながら自動発注のような便利機能を使いこなせていない企業は圧倒的に多いです。

だいたいの場合、システムを導入した直後に自動発注を試したものの、欠品や過剰在庫が多発し、その結果止めるということが多いようです。

在庫管理システムを導入する際には、次の3点に特に注意する必要があります。

  1. 自動発注

    発注点や発注リードなどの設定を正確に行う必要があります。また、季節や需要の変化に応じて定期的なメンテナンスが必要です。

  2. 生産計画

    生産量や所要量の計算など、正確な情報に基づいた設定が必要です。

  3. 原価管理

    商品の原価計算やコスト管理など、正確なデータに基づいた管理が求められます。

これらの機能を導入する際には、自社のオペレーションを細かくヒアリングし、必要な設定やメンテナンスが適切に行えるようにすることが重要です。

システム導入のステップ

①導入準備

システム導入の成功には、しっかりとした準備が必要です。
まず、システム導入の目的と達成したい目標を明確にし、それに基づいた具体的な計画を立てます。
そして、導入プロジェクトに関わる全てのステークホルダーを確認し、役割分担やコミュニケーションの方法を決めます。

  • 目的の明確化: システム導入の目的や目標を明確にする。例: 在庫管理の精度向上、コスト削減など。
  • 関係者の確認: プロジェクトに関わる全ての関係者(経営層、現場スタッフ、IT部門など)を確認し、役割分担を明確にする。
  • 現状分析: 現在の在庫管理プロセスやシステムを評価し、改善点を洗い出す。

②システム選定

システム選定では、自社のニーズに合ったシステムを選ぶことが重要です。
まず、必要な機能や非機能要件を定義し、それに基づいて複数のベンダーから提案を受けます。
その後、デモンストレーションやトライアルを通じてシステムの操作性や機能を確認し、最適なシステムを選定します。

  • 要件定義: 自社の業務フローや必要な機能を明確にし、システムに求める要件を定義する。
  • ベンダー選定: 複数のシステム提供会社を比較し、デモンストレーションを受ける。
  • 評価と決定: コスト、機能、サポート体制などを基に評価し、最適なシステムを決定する。

導入計画の策定

導入計画の策定では、詳細なスケジュールと予算を設定し、必要なリソースを確保します。
また、導入に伴うリスクを特定し、それに対する対応策を準備します。
これにより、導入プロジェクトをスムーズに進行させることができます。

  • プロジェクト計画の作成: 導入スケジュール、予算、リソース配分を計画する。
  • リスク管理: 導入に伴うリスクを特定し、リスク対応策を準備する。

④システム設定とカスタマイズ

システム設定とカスタマイズでは、自社の業務フローに合わせてシステムの初期設定を行い、必要なカスタマイズを実施します。
また、既存データの整理・クレンジングを行い、データ移行をスムーズに進めることが重要です。

  • 設定の初期化: システムの初期設定を行い、自社の業務に合わせたカスタマイズを実施する。
  • データ移行: 既存データの移行作業を行う。データの正確性を確認し、必要に応じてデータクリーニングを行う。

⑤テストと検証

システムのテストと検証では、各機能が正しく動作するかを確認し、実際の業務フローに基づいてシステムの操作性やユーザビリティを評価します。
不具合や改善点を洗い出し、必要な修正を行います。

  • システムテスト: 導入したシステムの機能テストを実施し、問題点を洗い出す。
  • ユーザーテスト: 実際の業務フローに沿ったユーザーテストを行い、操作性や使い勝手を確認する。

⑥トレーニングと教育

システムの操作方法や新しい業務フローに関するトレーニングを実施し、従業員がシステムを適切に操作できるようにします。
また、操作マニュアルやトラブルシューティングガイドを作成し、従業員に提供します。

  • 従業員の教育: システムの操作方法や新しい業務フローに関するトレーニングを実施する。
  • マニュアル作成: 操作マニュアルやトラブルシューティングガイドを作成し、全従業員に配布する。

⑦導入と運用開始

新システムへの切り替えを計画的に実施し、本稼働を開始します。
初期サポート体制を整備し、導入初期の問題解決を支援します。
また、定期的な点検やメンテナンスを行い、安定した運用を維持します。

  • 本稼働開始: テストが完了したら、システムを本稼働させる。
  • 運用サポート: 導入初期の問題解決やサポート体制を整備し、スムーズな運用を支援する。

⑧評価と改善

導入後の成果を測定し、目標が達成されているかを確認します。
従業員や関係者からフィードバックを収集し、システムの評価を行います。
その結果を基に、必要な改善点を特定し、継続的なシステムの改善を実施します。

  • 運用後の評価: 導入後の効果を評価し、目標が達成されているか確認する。
  • 継続的改善: 定期的にシステムの評価を行い、必要に応じて改善やアップデートを実施する。

導入に失敗しない在庫管理システムの特徴

導入に失敗せず、満足できる在庫管理システムの特徴を挙げてみました。

これらの特徴は、在庫管理アドバイザーが重要視するポイントです。

覚えやすく誰でも使えるシステム

機能が少ないうえ、自社に必要な機能のみを搭載しているシステムが適しています。

過剰な機能があると、ユーザーが使いこなせず、効率が損なわれる可能性があります。

データが利用しやすいこと

データの抽出が容易であり、必要なデータを柔軟に取得できるシステムが望ましいです。

システムからのデータ取得がスムーズで、エクセルやBIツールとの連携が円滑に行えることが重要です。

システムの機能は見た目や自動化がユーザーにとってわかりやすいため、システム会社の営業トークにも使われやすいです。

しかし、業務の効率化と同じくらい大切なのは、データの活用です。

在庫管理の重要な業務として、適正在庫の維持(欠品や過剰在庫の防止)があります。

その際は、エクセルやBIツールを活用してデータを様々な角度から分析することになります。

その際に使うデータは、在庫管理システムから取り出して使うことが多いでしょう。

しかし、残念ながら既存のシステムには、

  • データの抽出がしづらい
  • 抽出したいデータが取れない
  • データを抽出できる期間が決まっている

といったような問題があり、データを利用しづらくなっています。

データの利用の重要性は、導入当初ではユーザーが気づかないため、システム会社が説明しないことも多いです。

(システム会社がデータの利用というところまで頭が回っていないこともあります)

システムでできないこと、取れないデータをわざわざエクセルで別管理をする・・・といった残念なことも起こります。

将来を見据えたアドバイスがもらえること

システム会社が将来の業務変化やニーズを考慮し、適切なアドバイスを提供できることが必要です。

ユーザーが現時点で必要としていない機能やデータの重要性を説明し、将来の活用を促すことが重要です。

これらの特徴を持つ在庫管理システムは、導入後の満足度が高く、効果的な業務改善が期待できます。

在庫管理アドバイザーとして、これらのポイントを考慮した選定を行うことがおすすめです。

システム会社は業務経験が無い

なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?

実は、在庫管理システムを開発、提供している会社の担当者の多くは、在庫管理業務の現場経験がありません。

簡単に「設定すればできる」といいますが、設定値を決めたり、適正な値に維持する作業がどれだけ難しいか・時間がかかるかを知りません。

良いシステム会社は、業務プロセスや経験に基づいた的確なアドバイスを提供し、顧客とのコミュニケーションを重視します。

システムを導入するだけでなく、業務プロセスの改善や効率化にも貢献することができるでしょう。

これらの点を考慮して、信頼できるシステム会社を選択することが重要です。

【良いシステム会社の特徴】

  • 現在の業務フローの中で直したが方が良いことをはっきりと言ってくれる
  • 現状の管理レベルだとシステムの機能を生かすのが難しいことを伝えてくれるs
  • システムで得られたデータの活用まで見据えた提案をしてくれる

まとめ

以上、今回は在庫管理システム提案・説明を受ける際に気を付けることについてご紹介しました。

ご説明した内容を念頭において、システム会社の選定を行ってください。

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今回解説したシステム会社の選び方の他、過剰在庫・リードタイム・保管スペースに関するお悩みや、業務の生産性向上について課題を抱えている方も、ぜひ弊社へご相談ください。

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