効率よく発注できて、適正在庫を維持、さらに自社にとって最適な発注方法を知りたい・・・と悩んでいませんか?
発注の効率性と適正在庫を維持するためには、どんな発注方法があって、それぞれにどのようなメリットやデメリットがあるのかを知っておく必要があります。
発注方法の呼称は、簡易発注、同期化発注、分納発注等、様々ですが、
基本的に発注方法は、次の4つに分類できます。
また、それぞれの発注方法は、運用の難易度と在庫削減効果(適正在庫の維持しやすさ)が違います。
ご覧いただくとわかるように、運用が簡単な発注方法は、在庫削減効果(適正在庫の維持)は難しく、運用が難しい発注方法は、在庫削減効果(適正在庫の維持)が大きい。
といえます。これは、運用が難しい発注方法ほど、きめ細かい在庫コントロールをするからです。
取扱い品目の特性や使用状況、サプライヤーとの関係、発注事務効率などさまざまな要因を考慮したうえで決定します。
なお、発注方法を一つに絞る必要はありません。
在庫管理がうまくいっている会社は、複数の発注方法を戦略的に使い分け、効率を上げつつ適正在庫も維持しています。
この記事を読んで、在庫戦略と自社の商品特性に応じて、最適な発注方法を選択してください。
- 各発注方法のメリット
- 各発注方法のデメリット
- 各発注方法に向いているもの
- 各発注方法を運用する際の注意点
- 発注数を決めるために必要な情報
- 中小企業にお勧めの発注方法
在庫管理アドバイザーに発注方法をアドバイスしてもらう
目次
定期・定量発注
定期・定量発注とは、決まった時期に決まった数量を発注する方法です。
例えば、
- 毎週水曜日に、10個発注する
- 毎月15日に、30個発注する
といったような発注方法が、定期・定量発注です。
定期定量発注のメリット
発注するタイミングに悩むこともなく、発注数を決めるのに悩むこともありません。
最大のメリットは手軽さです。
- 事務処理も簡単、現場だけでも運用できるという導入しやすい
- 需要予測や発注量を考慮する必要もないので、システムも不要
定期定量発注のデメリット
タイミングや在庫量を考慮せずに、発注する方法なので過剰在庫や欠品しやすいです。
定期・定量発注が向いている品物
発注の特性上、安定した需要があり、多少在庫が多くても在庫金額に与える影響の少ないものが向いています。
具体的には、
- 出庫数(販売数や使用数)が安定していること
- 比較的安価な部品
- 発注リードタイムが短い(30日未満)
定期定量発注を採用して運用する際の注意点
定期的に、発注する間隔(例えば、毎月1回を毎週1回にするなど)や、発注数を見直したほうが良いでしょう。
少なくとも3か月に1回程度は見直しておきたいです。
定期定量発注を採用した品番は月末に在庫数をチェックして
- 過剰在庫になっていないか
- 在庫数が少なくなっていないか
をモニタリングすれば、見直し忘れをしにくくなります。
不定期・定量発注
不定期・定量発注は、在庫数がある一定数になった時に、決まった発注数で発注する方法です。
いわゆる「発注点発注」です。※発注点とは、発注する基準になる数量のことです。
一般的に最も多く採用されている発注方法で、中小企業がメインで使える発注方法です。
発注点発注のイメージは次のような感じす。
在庫が発注点に達したときに、決まった数量を発注するのが、発注点発注(不定期・定量発注)です。
不定期・定量発注のメリット
定期定量発注ほどではありませんが、導入は手軽です。
- 定期定量発注と違って、ある一定数になったら発注する方法なので、在庫数のコントロールがある程度できる
- 在庫管理をシステム化していなくても導入可能
不定期・定量発注のデメリット
- ある一定数になったことを見落とすと、発注漏れが起こる場合がある
- 在庫の増減が無いと、発注しないた滞留在庫になりやすい。
- 仕入先の出荷のタイミングが決まっているものには使えない。(船便で届くものには使えない)
不定期・定量発注が向いている品物
次のようなものに向いています。
- 出庫数(販売数や使用数)が安定していること
- いつ発注しても、仕入先が発注リードタイムが守れること
- 発注リードタイムが短い(30日未満)
不定期定量発注を採用して運用する際の注意点
この発注方法を選択する際の最大のポイントは、発注するタイミングを決める数量の設定(発注点の設定)です。
発注点の計算式は、
発注点=平均出庫数量×発注リードタイム+安全在庫
おおよその出庫量と発注リードタイムを決めておかないと、発注点が設定できません。
不定期・定量発注は、定期・定量発注と同様、在庫管理システムを導入しなくても現場で実施できます。
ただし、定期・定量発注とは違い、発注点になったことを見逃し、発注漏れのリスクがあります。
そのため、できれば在庫管理システムを導入したほうが良いでしょう。
発注点管理をさらに簡略化した不定期・定量発注が、ダブルビン(ツービン)発注(簡易発注方式と呼ばれることもあります。)です。
単価が安く、小さいものには、とてもお勧めの発注方法です。
定期・不定量発注
定期・不定量発注は、決まった時期に必要な数量を発注する方式です。
定期・不定量発注の代表的な方法は、MRPによる発注です。
定期・不定量発注のメリット
- 発注時に、その都度発注数を決めるため、過剰在庫や欠品になりづらく、適正在庫を維持しやすい
- 船便で入ってくるものにも対応可能
- 比較的長いリードタイムにも対応可能
- 定期的に発注するので、発注作業の予定が立てやすい
不定期・定量発注のデメリット
先ほどご紹介した2つの発注方法と比べると格段に運用が難しくなります。
また、その都度発注数を決めることもこの発注方法を採用するハードルになるでしょう。
- 発注数を決めるためのデータや習熟が必要
- 発注数を決めるのに多少時間がかかるため、発注が遅れる可能性がある。
- 発注数の見極めを失敗すると、次の発注日までに欠品する可能性がある。
- 発注間隔が長いと、1回あたりの発注量が多くなりやすい
定期・不定量発注が向いている品物
- 比較的リードタイムが長いもの(30日以上)
- 船便で運ばれてくるもの
- 仕入先からの出荷のタイミングが決まっているもの
- 高価なもの(在庫数をできる限り抑えたいもの)
定期・不定量発注をうまく運用ができれば、在庫量を抑えられるので適正在庫化が可能です。
定期・不定量発注を採用して運用する際の注意点
発注数を都度決めるという作業が必要なので、次の2点が必要です。
- 先々の販売計画や生産計画が必要
- 発注に時間を取られないようにシステムやエクセル化が必要
たくさんの品番を手作業で定期・不定量発注するのは、現実的ではありません。
そこで、お勧めなのがMRPの導入です。
ただし、MRPは安易に導入すると、過剰在庫・欠品が頻発して、大混乱に陥ます。
特にシステム化してMRPを発注方法として採用する場合は、
- MRPの仕組みを理解する。
- MRPに必要な設定を完璧にする
上記2点を実施しなければ、ほぼ100%失敗します。
システム会社からは、MRPを導入すれば、適正在庫が実現して発注の手間も省けますよ・・・
といううたい文句ですが、そう簡単でありません。
実際に、私が相談に乗った会社では、MRPの仕組みを持っていても、使いこなしている企業はゼロでした。
MRPについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
不定期・不定量発注
発注するタイミングも、数量にも制約が全く無いので、「必要な物を必要な時に必要なだけ」発注する最小限の適正在庫を維持できる究極の発注方法です。
不定期・不定量発注のメリット
在庫が減ったタイミングで、必要な数を都度計算して発注するので、過剰在庫も欠品も発生しません。
不定期・不定量発注のデメリット
- 高度なシステム化が必要
- 発注側と仕入先が親密に連携が必要
不定期・不定量発注を採用して運用する際の注意点
- リアルタイムで正確な在庫がわかる状態であること
- いつでも発注できる体制を整えて置くこと
- 仕入れ先もどんな状況でも発注を受け入れ、リードタイムを守り出荷出来ること
この方法を採用する際は、システム化は必須です。それなりのしくみと投資が必要です。
発注数を決めるために必要な情報
今回、4つの発注方法を紹介しました。
どの発注方法を選択しても、できる限り多すぎず、少なすぎず、適正在庫を維持したいです。
発注数を決め方は、定量発注か不定量発注によって異なります。
定量発注に必要な情報
定量発注は、毎回同じ数量を発注します。
したがって、発注する「定量」を決める時に、次の情報が必要です。
- 発注リードタイム
- 出庫(販売・使用)の予定数
※出庫予定数は発注リードタイム期間中の出庫予定数量です。
不定量発注に必要な情報
不定量発注は、その都度発注数を決めます。
つまり、発注数を決める時に、次の4点の最新情報が必要です。
- 在庫
- 発注残
- 発注リードタイム
- 出庫(販売・使用)の予定数
※出庫予定数は発注リードタイム期間中の出庫予定数量です。
中小企業にお勧めしたい発注方法
システム整備や、発注の効率性、運用の難易度を総合して考えると、中小企業がメインとして利用しやすい発注方法は次の2点です。
- 不定期・定量発注
- 定期・不定量発注
不定期・定量発注(発注点やダブルビン(ツービン)による発注)をメイン発注方法として使い、基幹部品、高価な部品、および船便でしか仕入れられない部品(輸入品など)に
対して、定期・不定量発注をサブとして利用すると良いでしょう。
安全在庫を設定する
欠品を防ぐためのバッファになる在庫が安全在庫です。
在庫管理をするうえで、最も怖いのは欠品です。
想定した需要数よりも、実際の需要が多い場合は欠品します。
かといって、安全在庫を増やしすぎると、過剰在庫や滞留在庫の原因にもなります。
多すぎず、少なすぎない安全在庫数を設定しなければいけません。
安全在庫についてはこちらのページで詳しく解説しています。
生産に生かして仕掛品在庫を適正化する
製造業の場合は、発注方法の考え方を、各工程の生産数量に応用すれば、仕掛品の在庫数量のコントロールができます。
不定期・不定量発注も、仕入れ先への発注への適用は難しいですが、社内の生産コントロールには十分使えます。
まとめ
4つの発注方法について、簡単にまとめると次のようになります。
- 定期・定量発注:最も簡単な発注方法。安価で多少多めに在庫をもっても大丈夫な品番に向いている。
- 不定期・定量発注:中小企業がメインで使える発注方法。ただし、船便を利用する品番には使えない。
- 定期・不定量発注:運用は難しいが、高価だったり、重要な品番に絞って使うと効果的。
- 不定期・不定量発注:在庫削減効果は非常に大きいが、運用が難しい。ただし、社内の仕掛品在庫管理には十分適用可能。
また、発注数量を決めるためには、次の情報が必要です。
- 定量発注の場合:発注リードタイムと出庫予定数量から「定量」を決める。
- 不定量発注の場合:最新情報(現在庫、発注残、生産・販売計画)、発注リードタイム
特に定量発注の場合は、「定量」情報をメンテナンスし、過剰在庫・欠品を防ぎます。少なくとも6か月に1回は見直すべきです。
最後に、バッファーとして安全在庫を設けて、急な需要増に備えます。
在庫管理の基本を学ぶ・相談する
今回、解説した4つの発注方法は在庫管理の基本知識です。
在庫管理をやっていくうえでまず大切なのは、 「こんな方法があるんだ!」と知ることです。
知らないことはいくら頭をひねっても出てきません。
それどころか、自分のやっている方法が実は、あまり向いていない方法で返って自分自身を苦しめている場合もあります。
そのうえで、ただ単に知識として知るのではなく、使いこなすためには、原理原則を理解してそれぞれのメリットとデメリットを認識すれば、様々なシーンで応用できます。 残念ながら、表面的な知識だけを自分の持っている知識や、自社の業務を原理原則に当てはめて考えられる人はかなり少なく、 「うちでは使えない!」と短絡的に考えてしまうことが多いです。
まずは、在庫管理の知識を学んで知ることが大切です。
さらに、ただ単に知識として知るのではなく、原理原則を理解してそれぞれのメリットとデメリットを認識すれば、様々なシーンで応用して使いこなすことができます。
残念ながら、表面的な知識だけを自分の持っている知識や、自社の業務を原理原則に当てはめて考えられる人はかなり少なく、
「うちでは使えない!」と短絡的に考えてしまうことが多いです。
例えば、
今回解説した発注方式も、「生産」に応用することは十分に可能です。
しかし、表面的にとらえてしまうと、「発注にしか使えない」と考えてしまいます。
知識を知ったうえで、正しく原理原則を認識して使いこなせるようになることが、在庫管理の効率化と適正在庫につながります。
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