流動数曲線とは、別名、追番管理と言われるエクセルだけでできる生産管理手法です。(戦前の中島飛行機(現在のスバル)によって考案された日本生まれの生産管理方法です。)
中小企業が生産管理を手っ取り早くはじめるには一番適したものと考えています。(流動曲線と書いてある記事もありますが、間違いなので注意しましょう!)
なぜなら、高価な生産管理システムを思い切って導入したものの使いこなせず、結局各担当者が属人的なエクセル管理を続けている企業がとても多いからです。
流動数曲線をお勧めする最大のメリットは次の2点です。
- 誰でも理解できる分かりやすさ
- 初期投資が不要なエクセルだけで始められる
流動数曲線は明日からでもすぐに導入できます
準備するのは計画値と実績値のみなので、準備にも設定にも時間がかかりません。
生産管理で最も重要な、生産リードタイムを短くしつつ、仕掛品在庫を最小限に抑えることが実現可能です。
さらに、流動数曲線は使い方を工夫すれば、工程管理にも販売管理にも利用可能ですので、そちらについても合わせて解説します。
- 流動数曲線が使いやすい3つの特長
- 流動数曲線の使い方
- 流動数曲線の応用的な使い方
- 生産管理システムをお勧めしない理由
今回解説する流動数曲線のエクセルのサンプルを無料でダウンロードできます。
実際に出来上がったエクセルを触りながら解説を読んでいただけますと理解が深まりやすくなります。
目次
流動数曲線がシンプルで使いやすい3つの特長
流動数曲線がシンプルで使いやすい理由としては次の3つの特長があるからです。
- マスター整備が不要
- 管理項目がほぼ無い
- ビジュアルで分かりやすい
マスタ整備が不要
流動数曲線はマスタが無くても問題ありません。
一般的な生産管理システムを利用する場合、マスターと呼ばれる基本情報を大量に整備しなければいけません。
入力する項目が少ない
流動数曲線に必要なのは、計画と実績の入力のみです。
入力する項目が少ないので、負担を減らしながら生産管理ができます。
ビジュアルで分かりやすい
生産の遅れや仕掛品の増え方などがエクセルのグラフで一目でわかります。
流動数曲線をエクセルで作る方法
完成形は次のような形です。(無料ダウンロードのサンプルと同じです)
流動数曲線を作るに当たり、必要なデータは、次の2つだけです。
- 生産計画数
- 生産実績数
累積計画数と累積実績数、累積遅れ数は自動計算です。
折れ線グラフを作成する
累積計画数、累積実績数、累積遅れ数を使って折れ線グラフを作ります。
折れ線グラフを見ることで、計画に対して現在の実績がどうなっているかが一目瞭然になります。
見るポイントは以下の4点です。
計画に対する遅れ(横軸で見る)
当初立てた計画に対して、実際の生産が何日くらい遅れているかが分かります。
遅れている数量(縦軸で見る)
当初立てた計画に対して、実際の生産が何個くらい遅れているかが分かります。
折れ線グラフの傾き
折れ線の傾きが生産能力を示しています。
例えば、当初計画を立てた時に想定していた生産能力よりも、緩やかな傾きであれば実際の生産能力は低いということが分かります。
応用的な使い方
流動数曲線は、とてもシンプルなので様々な応用が可能です。
- 工程ごとに作成する:工程ごとの進捗状況・能力が分かる、累積遅れ数は前工程の仕掛在庫(未着手品の在庫数)になります。
- 工程の開始と完了で作成する:工程のごとの製造リードタイムが把握できます。
工程ごとに作成する
工程別に作ると、各工程のグラフの傾きにより、どこの生産ラインの能力が低い(生産が滞るポイント)のかが、分かります。
例えば、工程1の生産能力が100個/時間、工程2の生産能力が90個/時間の時、工程2は能力不足で、前工程から流れてくる仕掛品在庫が溜まりやすいボトルネック工程(制約工程)と言えます。
工程の開始と完了で作成する
計画を着手(開始)、実績を(完了)に置き換えると、その工程のリードタイムの把握と工程内の在庫(着手しているけど、完了していないものの数量)
グラフの読み方は以下の通りです。
このように極めてシンプルながらも、生産の進捗管理
を行うために、必要な事が全てつまっているのが流動数曲線です。
また、製造だけではなく、
- 在庫量の管理(入荷と使用)で在庫が計画的に使われているかを管理する
- 販売管理:販売計画と販売実績を見て、販売の遅れている日数と数量を管理する
など、様々な応用方法があります。
ぜひ色々と試してみてください。
流動数曲線の導入をご支援します
初期投資が不要なエクセルだけで導入できる流動数曲線は、中小企業が生産管理を始めるにあたって最適な方法です。
原価管理や仕掛品在庫の削減、生産性の向上など様々な課題はあると思いますが、生産管理の第一歩は、本当の生産状況の把握、そしてそこから見えてくる課題の特定です。
流動数曲線をどうやって自社に取り入れれば良いかを在庫管理の専門家がアドバイスします。
ささいなことでもお気軽にどうぞ!
生産管理システムをお勧めしない5つの理由
最後に、私がなぜ生産管理システムの導入をお勧めしないのかをお伝えします。
端的にお伝えすると、これまで200社以上の製造業の方の相談やコンサルティングを行ってきましたが、導入している生産管理システムを使いこなせている企業はほぼゼロだったからです。
その理由には共通点があります。
- 自社の生産体制に合っていない(例:受注生産なのに、見込み生産型の生産管理システムを導入している)
- 機能を理解できていない(渡されたマニュアルを読まない、または読んでも理解できない)
- 設定が不十分(初期設定のままで使っている)
- 自社に必要な機能が入っていない
- 覚えるのが大変で諦めている
システム会社は、自社のシステムを売るのが仕事ですから、あなたの会社の生産体制にあっているとか、機能が理解できるとかは関係ありません。
必殺の営業パターンは、
- グラフや帳票作成など、分かりやすい機能を見せる。(分かりやすいものが一瞬ででき上ることに感動することを知っている)
- 課題の解決ができると強くすすめる(ただし、自社のシステムの機能を100%理解し、きちんと設定して使うことが条件なのは言わない)
MRPシステムの導入は典型的な失敗パターン
MRPとは、製品を作るために必要な部品を「いつ、どれだけ」を自動計算できるとても優れた仕組みです。
発注作業は大変なので、必要な部品を必要な数量だけ、しかも自動計算で!
作業効率のアップと在庫削減(適正在庫化)を実現するために、生産管理システムの導入の決め手にもなることが多いです。
一方、生産管理典型的な失敗パターンは、MRPの導入です。
MRPを導入するためには、以下のことが必須です。
- MRPシステムには入念な事前準備が必要
- 計画通りに生産が進むこと
- 在庫精度が非常に高い事
ある会社では、MRPシステムを導入したことで、生産が大混乱に陥ったことがあります。
私が、今の現状だと止めたほうが良いとアドバイスをしたのですが、理想に目がくらんでしまい数千万円をかけて導入しました。
導入後は、過剰在庫も増え、欠品も増え、最悪の状態だったそうです。(結果的に、MRPシステムは止めたといっていました)
MRPについて詳しく知りたい方はこちら
MRPの基本知識と導入方法|導入・運用に失敗しないための基礎知識
MRPがスムーズに導入できれば、これほど強い武器はありません。一方、運用できない体制で導入すれば、逆に大きなリスクのあるもろ刃の剣です。
MRPに興味はあるけど、、うちは導入できるのか??ということを知りたい場合はぜひお気軽にお問い合わせください。システム会社が伝えないことをハッキリとお伝えします。
MRPが導入可能か、診断します!
【無料】流動数曲線を作るエクセルをダウンロード
ほとんどの中小企業の場合、高度な生産管理システムを導入すべきではありません。
初期投資不要のエクセルだけでできる流動数曲線から始めてみてはいかがでしょうか?
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自社にあった生産管理システムを導入したい
自社にあった生産管理システムを導入したいという場合は、弊社が開発した「成長する在庫管理システム」をご検討ください。
生産管理業務経験のある、弊社のアドバイザーがあなたの会社の生産体制、業務実態に合わせた生産管理機能を組み込みます。
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- 期限管理が必要な食品メーカー様
流動数曲線を自社に導入したい
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こんな方はぜひ在庫管理110番にお問合せください。
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