在庫管理の相談をいただく中で、誰でもできる仕組み作りとともに、最も多い質問は、適正在庫です。
その中でも、生産計画や販売計画の精度を上げたいというニーズはとても強いです。
需要予測システムを導入したい、需要予測に興味があるという場合は、ぜひこの記事をご一読していただきたいです。
正確な需要予測ができれば、過剰在庫や欠品に困ることはないでしょう。
しかし、多くの企業が需要予測をやりたい!と思っていても、実際にはできていないのはなぜでしょうか?
最も多い勘違いは、システムを導入したら需要予測ができると思っていることです。
- 需要予測システムを導入したらできるようになる
- AI(人工知能)に任せれば需要予測は大丈夫
導入するだけでは何も解決しません。
じつは需要予測には、成果につながる活かし方と、数字に結びつかないやり方があります。
この記事では、需要予測によって業績アップを果たした事例を紹介します。
この記事を読めば、需要予測を導入するために必要なこと、そしてそ後の精度を保つための知識が得られます。
需要予測を始めるスタートラインに立ちたいのであれば、ぜひご一読ください。
- 需要予測ができるようになると実現すること
- 【事例】ワークマンが需要予測導入に成功した理由
- 成功の要因は全社員がデータリテラシーを持ったこと
- 需要予測の精度を上げる2つの対策
- 需要予測に絶対に必要なデータ
- システムはスモールスタートで導入すれば失敗しない
- 需要予測の精度を上げて、機会損失を防ぎたい
- 在庫分析によって、在庫削減を実現したい
- 需要予測システムを導入して、競争力を上げたい
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目次
需要予測が実現するとできるようになること
需要予測ができるようになれば、経営面、オペレーション面(現場)の両方で大きなメリットがあります。
経営面のメリット
販売機会を逃さず、売上が増えることはもちろんのこと、無駄な仕入れが無くなるため、過剰在庫や不良在庫も無くなります。
その結果、在庫として寝る資金が減って、キャッシュフローも改善します。
オペレーション面のメリット
最大のメリットは発注効率の改善です。
- ベテランの勘と経験に頼った発注から脱却できる
- 自動発注や発注リコメンドによって、誰でも発注できる
- 必要なタイミングで、発注できるようになる
【需要予測の事例】(株式会社ワークマン)
需要予測の事例として、株式会社ワークマン(以下、ワークマン)を取り上げます。
同社は、日本全国で作業着・作業用品の専門店を900店舗以上、チェーン展開する企業(国内ではユニクロ以上)です。
近年は、高機能・低価格のアウトドア、スポーツ、レインウエアの専門店「ワークマンプラス」や女性向けの高機能ウェアを提供する「ワークマン女子」で、人気を集めています。2019年は大雨で演出した「過激ファッションショー」が脚光を浴びました。
コロナ渦(20年3月期)において売上高は1220億、時価総額8600億という好業績を残しています。
2017年3月期の売上高は743億円だったことから、倍速で成長していることは明白でしょう。
新型コロナウイルスの影響で、売上低迷・過剰在庫に悩まされる企業が多い中で、なぜワークマンは成果を上げ続けているのでしょうか。
需要予測の視点から言えば、徹底的な「データ経営」が関係しています。
もともとワークマンは、在庫を持たない経営を展開していました。
しかし現在は、積極的に在庫を持つ戦略をとっています。
かつてはメーカーから仕入れた既製品だけを販売してきましたが、2015年ごろからプライベートブランドを手がけるようになったためです。
プライベートブランドは、潜在市場(高機能・低価格というブルーオーシャン)を開拓するためには欠かせない新業態でした。
この進出に合わせて導入されたのが、データ経営です。
全社員(新入社員から役員まで)がデータリテラシーを身につけるように教育体制がしかれました。
とくに力を入れて磨いたのは、エクセルを使って従業員一人一人データ分析力です。AI(人工知能)やシステムではありません。
誰でも使えて馴染みのあるエクセルです。
例えば、需要予測で言えば
- 移動平均
- 指数平滑
- 回帰分析
- 相関分析
などの需要予測の基本的な手法の考え方と使い方を、全社員(平社員から経営層まで)が習得。
この教育によって、もとも経験と勘に頼ったアナログワークマンから、デジタルワークマンに移行していきました。
具体的には、データに基づいた予測によって
- 品ぞろえや売場づくりの実現
- 在庫回転日数、在庫回転率の改善
- 欠品率の改善
- 適正な入荷コントロール
などの効果があり、すべてが好業績へと結びついています。
自動発注システムの導入
2021年より、ワークマンは日立製作所とともに、約10万点の発注業務を自動化するシステムを導入したことを発表しました。
「Hitachi Digital Solution for Retail/AI需要予測型自動発注サービス」をベースに、在庫回転率が低い品目に対応する「自動補充型」と、在庫回転率が高い品目に対応する「AI需要予測型」を併せ持ったシステムです。
AIによる需要予測は、機械学習をベースにしているため、変化が激しい複雑なマーケットや、さまざまな外的要因が関係する環境に適しています。
さらなる店舗運営の効率化のために、ワークマンはシステム化に踏み切ったと考えられます。しかし、システムを導入したからと言って、ワークマンのデータ経営の姿勢は変わりません。
システムに任せっきりにするのではなく、データ分析を行い、常に最適化を図っています。
データリテラシーを全社員が持ったことが成功の要点
今回紹介した事例から学べることは、全社員のデータ教育を強化させて、データリテラシーを全員が持ち、全員が在庫分析力を身に着け、データを活用する意識の土壌を作り上げたことです。
いきなり高度な需要予測システムを導入したのではありません。始まりはエクセルでした。あなたのパソコンにも入っている馴染みのあるソフトです。
さらに検証を繰り返して、最低限のシステムを導入することで、精度の高い需要予測を実現してきました。
現場の経験と勘だけに頼らない、システムだけにも頼らない、見事なデータ経営がワークマンの成功の秘訣ではないと考えられます。
データ経営がうまくいかない企業の特徴として、データリテラシーが一部の社員にしか身についていない、という点が挙げられます。さらに経験と勘に頼る社員もいて、どちらもが衝突してしまうという問題が発生しやすくなります。
さらに、経営層もデータリテラシーが無いため、データ経営に踏み切れません。
なにをもとに問題解決の提案をするのか、戦略を立てるのかが統一されていない企業は、成果を上げにくくなるということがわかります。
デジタルトランスフォーメーションが企業経営で欠かせない昨今、組織全体でデータ分析のスキルを身につけていくことが急務です。
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需要予測の精度を上げる2つの対策
ワークマンの需要予測が優れているポイントを、もう少し言及していきます。
いつも需要予測で議論されるのが、精度の高さです。
この問題を乗り越えるために、ワークマンがとっている対策が2つあります。
- ABテスト
- 自動発注システム
それぞれを詳しく見ていきましょう。
<ABテスト>
需要予測には、さまざまモデルがあり、そのモデルを選ぶかによって需要予測値が変わります。そこでタイプが異なる複製のモデルを使って、需要予測値を算出しています(アルゴリズムはパッケージソフトをベースにエクセルで内製化したものを使用)。予測誤差率を比較して、もっとも優秀な結果を採用しながら、このテストを何度も何度も繰り返していくことで精度を上げることができます。さらに、設定条件をこまめに見直して分析を実施しています。
<自動発注システム>
一括発注ボタンで売れ筋商品が届く自動発注システムを導入しています。このシステムに需要予測を組み込んでいます。店舗単位で商品ごとの在庫数をはじき出すことが可能です。さらに需要予測だけではなく、安全在庫(リードタイム、納品サイクル、店休日)、理論在庫(前日理論在庫)を加味して、発注勧告が届くようになっています。結果的に、在庫の最適化を実現して、販売機会ロスの抑制につながっています。
つねに需要予測モデルを磨き上げながら、データに基づいた発注・入荷で欠品・機会損失を防いでいることがわかります。これらの施策が精度の高さを担保していると言えるでしょう。
システムを導入導入したから、システムに任せておけばいいというのは、大きな間違いです。
需要予測の高い精度をたもつためには、常に調整・見直しが必要です。
需要予測にはデータが必要
需要予測とは、「過去の売上・販売実績、その時に何が起こったかを数値化して、商品(製品)の需要を予測すること」です。
ワークマンの事例では、従業員全員がデータリテラシーを持ち、データ分析を会社を挙げて実施したことが成功に結び付いています。
データリテラシーがあっても、データが無ければ分析はできません。
需要予測で必要なことは、
- データが蓄積されていること
- 何が仕入れや販売に影響を与えたかを蓄積していること
つまり、データが無いとデータ分析をしたくてもできませんし、需要予測もできません。
データの蓄積が需要予測をするための第一歩です。
データは量と質が必要
蓄積するデータには、量と質が求められます。
特に、仕入れ、受注(販売)の実績データは、少なくとも2~3年分のデータが必要です。(理由:季節性の有無などを見るため)
大量のデータがあっても、そのデータが間違いだらけでは意味がありません。
つまり、データの質も必要です。
在庫管理において、最も重要なデータの質は、在庫精度です。
在庫精度とは、データ上の在庫数と現物の在庫数が一致していることです。
これを情物一致といいます。
情物一致は在庫管理の基本中の基本であり、これができていれば正確なデータが取れていることが保証されています。
需要予測システムや発注管理システムだけではなく、在庫管理システム、倉庫管理システム、販売管理システムなど、様々なシステムがあります。どんなシステムであっても、現品管理は怠ってはなりませんし、システムを扱う担当者のデータリテラシーが問われます。システムを導入する際は、注意しなければならないポイントです。
在庫管理110番では、独自に開発した在庫管理システム『成長する在庫管理』を提供していますが、導入する前の準備が何よりも大切です。
システムはスモールスタートで導入すれば失敗しない
データを大量に、そして正しく蓄積して、データ分析に使えるようにするためには、システムの導入は必須です。
ここでも、ワークマンは情報システムを導入する際、注意していた点がありました。
それはスモールスタートをすることです。
- 機能が100個あるシステム
- 機能が10個しかないシステム
どちらを選ぶのが正解でしょうか。
一般的な会社は多機能システムを選択するでしょう。
ワークマンの考え方では、後者です。
なぜなら機能が100個のシステムを導入しても、20個しか使わず、80個は無駄になる可能性があります。
一方で、10個しか機能がないシステムは、確実に使用します。そして、必要は機能はあとから追加していけば良いのです。
すなわちシステムに業務のやり方を合わせるのではなく、システムを業務のやり方に合わせていくという発想です。
実際に、私も「現行システムがうまく使えていない、システムの入れ替えしたい」という相談をもらうことが多いですが、相談者のほぼ100%が、導入したシステムの機能を半分も使いきれていないのです。多額のお金を投資して、失敗しているのが現状です。
ワークマンの考え方は正しく、弊社も必要最小限の機能を導入するスモールスタートを強く推奨してます。
どんなシステムを導入するにしても、まずはスモールスタートをして、徐々に機能をプラスしながら、業務のシステム化をしていくことを提唱します。とくに需要予測においては、高度なシステムを導入する必要はありません。
仕入れや販売の実績を登録できるシステムで充分です。
欲張りせずに、スモールスタートで必要最小限の機能を持つシステムを導入しましょう。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムとは、「どの在庫がどこで、どれだけ保管されているのかを、一元管理する」ためのソリューションです。
ただ在庫管理を効率化させるだけではありません。
在庫分析や売上分析に活用できます。需要予測をして、期待できる効果は以下の通りです。
- 過剰在庫・滞留在庫、欠品の防止
- 適正在庫の維持
- 新商品の販売戦略
- 資金繰りの計算
在庫管理システムで、在庫データを使って未来を見通す力が身につけられます。
と言っても、わざわざ機能性が高い在庫管理システムを導入しなくても構いません。
最低限の機能だけで十分です。機能性よりも「現場での使いやすさ、操作性の良さが重要」です。
ここ最近は、需要予測に特化した「需要予測システム」も注目されています。
統計モデルやAI、機械学習を駆使したシステムがあり、発注の最適化に役立ちます。
しかし製造業であれば業務と連動している在庫管理システムの方が使い勝手は良いでしょう。
弊社では在庫管理のプロが手がけた「成長する在庫管理システム」を提供しています。
- 在庫分析(回転率、期間中の入出庫数、開始・完了時点在庫数)
- 売上分析(取引先別の売上の予定・実績金額、期間指定可能)
など、需要予測に十分な機能がそなわっています。
はじめての在庫管理システムの採用でもご安心ください。
見やすい画面で、システムが苦手な初心者でも操作が簡単です。
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在庫管理アドバイザーが直接アドバイス
在庫管理について学ぶ(受講者特典あります)
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