GMROI(商品投下資本粗利益率)は、売上高・粗利益・粗利益率と在庫回転率だけでは分からない商品効率(在庫でどれだけの粗利を作ったか)がわかる経営指標です。
もっと、分かりやすく言えば、仕入に要した投資(原価)を、どれだけの期間で回収して、どれくらいの粗利を生み出したか?が分かるようになります。
GMROIは商品の原価と粗利の両方を見ますので、キャッシュフローの向上や改善にも大きく貢献します。
つまり、キャッシュフローを改善したい、向上させたいと考えている会社にとっては、とても役立つ経営管理指標と言えます。
目次
GMROIの計算式
GMROIは以下の計算式は、以下の通りす。
GMROI=粗利益額÷平均在庫高
または、粗利益率×商品投下回転率(※商品投下回転率=売上高÷平均在庫)
です。
GMROIの数値は大きければ大きいほうが、よく儲かっている(キャッシュフローに貢献している)ということになります。
つまり、以下のような商品はGMROIが大きくなりません。
- 価格が高くてもほとんど売れていない
- たくさん売れていても、価格が安い
GMROIを高めるためには、価格面と在庫の流動性をバランスよく高めなければいけないため、
値下げをして売りさばいて売上を稼ぐだけではダメ、高価な商品を仕入れても売れなければダメといったように現場に目標を掲げることが可能です。
GMROIの目安
GMROIの目安は、企業によっても異なります。例えば、不動産や情報通信のようにそもそも在庫が無い業種の場合は高くなる傾向にあります。
製造業(一般機械器具製造)の場合、粗利益率が38.6%、回転率が60です。(参考:業種別経営指標(日本政策金融公庫))
GMROIの計算式は、
GMROI=0.386×60=23.16
となります。
GMROIの目標値の立て方は、以下のような方法があります。
- あなたの会社の競合や、業界で良く稼いでいる会社のGMROIを調べて、ベンチマークにする
- 目標とする経営計画から導かれる財務数値から設定する
GMROIを高める3つの方法
GMROIを高める方法は、計算式を見るとわかる通り、主に2つあります。
- 粗利益率を上げる
- 回転率を上げる
ここから見てわかるように、長期間在庫を寝かせたうえに値下げで売るというのは、経営にとって大打撃であるということがわかります。
GMROIを高めるためには、仕入れた商品を、
- 計画した利益率で値下げをせずにしっかりと売り切ること
- 売切れなかったら早期に小さな値下げなどで売却を図ること
がとても重要な事だと言えます。
投下資本とは何か?
GMROIの計算式に「商品投下回転率」という言葉があります。
これは、仕入れた商品をどれだけお金に変えることができたか?ということです。
ちなみに、投下資本とは、有利子負債と株主資本の合計額です。つまり、売上を上げるための資本(お金)の総額です。
投下資本利益回転率(ROIC)は、投下資本(つまり、会社が持っているお金や資産)で、どれだけ利益を出したかという指標です。
近年、商品寿命も短くなり、社会環境が目まぐるしく変わります。昔のように単に売上が大きい、利益率が大きいだけでは生き残れず、
資本を効率よく使って稼ぐということが重視されています。そこで、経営指標として取り入れる企業が増えているのがROICです。
ROICについては、こちらの記事で解説しています。
GMROIと交叉比率の違い
GMROIと似た指標で、交叉比率というものがあります。
どちらも商品効率を計算する指標であり、どちらを使えば良いかよくわからない・・・という声をよく聞きます。
結論から言えば、交叉比率よりもGMROIを用いたほうが経営管理上、望ましいです。
その理由は、GMROIは在庫投資額の効率を評価できるからです。
交叉比率の計算式は、
売上総利益÷在庫高(※販売価格)
で、原価を見ずに、売価のみで評価します。
一方、GMROIでは、商品回転率の計算に原価を使います。
GMROIを使ったほうが良い
交叉比率は売価のみで評価するため、仕入(原価)に対してどれだけ稼いだが?
という視点が抜けています。
つまり、とにかく売れば良いという視点になりがちです。
とにかく売るというのは、「セールをしても、値下げをしてでも」という考えにつながりかねず、
仕入に対してどれだけ儲けたか?とならないためです。
一方、GMROIは仕入(原価)をベースに評価する指標です。
つまり、仕入に対してどれだけ稼いだか?ということを評価するため、少ない仕入れ(原価)で多くの利益を稼ぐ(効率よく稼ぐ)と管理ができるからです。
交叉比率が長年使われている理由
それでは、なぜ交叉比率が推奨され、使われ続けているのでしょうか?
昔は、商品値札しか商品の金額を知る手段が無く、原価を管理するのがとても大変で交差比率で計算せざるを得ませんでした。
現在は、仕入れ時の原価を管理するのは、システムを整備しさえすれば簡単です。
原価がわかる状況であれば、原価がすぐに分かるようになりましたので、GMROIは計算しやすくなりました。
在庫投資額の効率を評価できるGMROIを使うのがおすすめです。
交差比率の問題点は、「売値」から見るため、仕入れ(原価)を軽視しやすくなってしまう可能性があります。
もし、システムを導入していて商品の原価がすぐに分かるような状況になっていれば、
これまで、交差比率を使っていたとしても、GMROIに見直しても良いでしょう。
仕入・販売計画とGMROIを連動させる
ここまで解説した通り、GMROIを計算すること自体は簡単です。
経営目標を立てるのは、経営者ですが目標を達成するのは現場です。
つまり、GMROIを単なる経営目標値ではなく、現場の管理指標、計画と実績の確認に落とし込む必要があります。
そこでご紹介したいのが、仕入れ販売計画ナビシートです。
仕入れ販売計画ナビシートは、実務担当者の日常業務である仕入れ・販売計画と実績をGMROI、さらにキャッシュフローを可視化できる画期的な管理表です。
特別なシステム不要でエクセルで使えるのが特徴です。
下の図は、仕入れ販売計画ナビシートの実際の操作画面です。
必要な値を入力するだけで、GMROI、キャッシュフローの予測値が一目でわかる仕組みになっています。
- 販売価格:5000円
- 毎月200個売る計画
- 値入率60%
- 一括仕入:7200個
この条件で、1年後の売上・粗利・GMROI・キャッシュフローをシュミュレーションをした結果は、次の通りです。
- 売上高の見込み:1200万円
- 粗利益の見込み:720万円
- GMROIの見込み:0.61
- キャッシュフロー:-240万円
つまり、1年経ってもキャッシュフローがマイナスということは、仕入原資を回収できない計算になります。
他の商品への仕入も全て借金で賄う必要があり、キャッシュフローはますます悪くなります。
この状況を改善するために、以下のようなシュミュレーションをしてみました。
- 販売価格:5000円
- 毎月200個売る計画
- 値入率30%
- 毎月200個仕入れ
仕入値を値上げしたため、粗利は小さくなります。
この条件で、1年後の売上・粗利・GMROI・キャッシュフローをシュミュレーションをした結果は、次の通りです。
今回の、仕入れ・販売計画ナビシートによるシュミュレーションの改善前と改善後を比較すると次のようになります。
GMROIは、一括仕入の約17倍、キャッシュフローの差額は565万円となり、どちらが会社にとって良いかは明らかでしょう。
改善前の一括仕入れの場合ですと、1年経っても仕入れに使った資金を回収できず、240万円マイナスです。一方、
利益率を下げ、毎月仕入れをした場合、キャッシュフローは1か月後からプラスになり、1年後は350万円もプラスになります。
改善前と改善後のキャッシュフローの差額は、565万円にもなります。
このように、仕入れ販売計画ナビシートを使えば、ベテランバイヤーの「エイヤッ!」という勘に頼らなくても、新人バイヤーであっても、ロジカルにかつ経営に役立つ仕入れ・販売計画を作れるようになります。
仕入販売計画を学ぶ
このセミナーを受講すれば、仕入販売計画ナビシートを受講特典としてプレゼントします。
実は、今回紹介した仕入販売計画ナビシートは、このセミナーの講師が開発したものです。
販売計画ナビシートは、単に理論的なものではなく実務で必要だったので開発しました。会社の在庫改善を担当した時、このシートを使って自動補充システムの導入/実稼働をリードし、80億円の不良在庫を約70%削減し、そしてキャッシュフローの健全化にも成功させた実績があります。このセミナーを受講すれば、仕入れ販売計画ナビシートの活用方法と不良在庫を残さない、儲かる仕入れ販売計画が学べます。
仕入れ販売計画ナビシートの活用方法と不良在庫を残さない、儲かる仕入れ販売計画が学べます。
エクセルだけで実現!新人バイヤーでもできる