在庫回転率の改善は、金額ではなく数量で計算する理由

在庫回転率の計算式

在庫回転率を金額と数量で算出するための計算式は、次の通りです。

金額で計算する場合

期間中の出庫金額(売上原価でも良い)÷平均在庫金額 

※平均在庫金額の出し方は、(開始時の在庫金額+終了時の在庫金額)÷2 が一般的

数量で計算する方法

数量の場合は、期間中の出庫数÷平均在庫数

※平均在庫金額の出し方は、(開始時の在庫数+終了時の在庫数)÷2 が一般的

となります。

ただ、企業によっては独自の方法で在庫回転率を計算していることがあります。

同じ用語でも、計算方法が違えば評価できることが違うので注意しましょう。

計算例を示しながら解説したいと思います。

出庫金額に売上金額を使うとどうなるか?

出庫金額に売上金額を使って在庫回転率を計算する方法が紹介されているケースがあります。

しかし、この方法では正しい在庫回転率は計算できません。

その理由は、売上とは、「仕入れ値×1.5」など、仕入れたときの原価に対して、利益をのせたものだからです。

在庫回転率とは、「在庫がある一定期間で何回転したか」を見るものです。

実際に売上で計算してみると、間違いであることが一目でわかります。

左の表が従来の方法(原価で計算)した場合、右の表が売上を使って計算した場合です。

在庫回転率の計算

この会社は、開始時に在庫金額は100円で、10日間で50円売り、終了時点で在庫金額は100円ということになります。

在庫回転率は0.5となります。在庫回転日数は20日となり、20日で在庫が1回転(入れ替わる)ということが分かります。

一方、売上で計算すると、利益を乗せている分出庫金額(売上金額)はよくなります。

そうすると、在庫回転率は0.9となり、在庫回転日数は約12日(11.7日)となります。

見た目上の在庫回転率が良くなるだけで、「在庫がどれくらいで回転したか?」ということを正しく評価できないので、という指標でみると、出庫金額に売上金額を使うのは適切ではありません。

在庫の計算方法が異なる場合

在庫管理110番に寄せられた質問で、

従来の在庫回転率の計算方法ではなく、在庫回転率 = 期間中の出荷数÷(期間中の入荷数+繰越在庫)

と計算している会社があったが、これは何を計算しているのか?というご質問がありました。

先ほどと同じ条件で計算してみると次のようになります。

在庫回転率の変則的な計算

在庫回転率が通常の計算方法と違う結果になりました。

これは、在庫回転率というよりも、「ある一定期間の在庫(仕入を含む)に対して、何パーセントが出庫できたか?」という指標に見えます。

今回の場合は、終了時の在庫150円に対して、約30%しか出庫できていないということになります。

在庫回転率は、「ある一定期間でどれくらい在庫が回転したか=在庫を何日分くらい持っているか?」という指標なので、

一般的な在庫回転率と定義すると混乱を招きます。

ただ、極端な例で計算してみると、「ある一定期間の在庫(仕入を含む)に対して、何パーセントが出庫できたか?」という条件が崩れます。

  1. 入庫が1回もない
  2. 期間中に入庫もなく、かつ在庫を全て出庫する
在庫回転率の変則的な計算例

「ある一定期間の在庫(仕入を含む)に対して、何パーセントが出庫できたか?」という見方をすると、

1の場合は、50%の出庫にもかかわらず、在庫を100%出庫したことになってしまいます。

2の場合は、100%消化ですが、計算ができません。

独自の計算方法を使う場合は、いくつかのパターンを試す必要があります。

そして、どんな条件であれば使えるのか(逆に、使えない条件は何か?)を

理解して正しく使わないと、判断を誤ってしまうので使用の際は注意が必要です。

出庫の計算方法を別の計算方法に置き換えてみる

出庫数の計算方法を別の方法に置き換えると、

出庫金額=開始時の在庫金額 + 仕入金額 ー 終了時の在庫金額

になります。この計算方法はどこかで見たことがありますね。

そうです、売上原価の計算方法と同じです。

売上原価=期首棚卸在庫棚卸高+当期仕入高-期末在庫棚卸高

表と図を一緒にしてみると次のようになります。

出庫数の計算方法

こうするとより分かりやすいでしょう。

在庫回転率 = 期間中の出荷数÷(期間中の入荷数+繰越在庫)の問題点は、開始時点の在庫が考慮されていない点です。

ただ、一定の条件下であれば機能しそうです。

少なくとも一般的な在庫回転率ではないので、混同しないように注意しましょう。

在庫回転率を改善に活用する場合は、金額ではなく数量を使った方が良い

ところで、在庫回転率は金額で計算する場合と数量で計算する場合があります。

どちらがいいですか?と聞かれることがありますが、時と場合によります。

強いて言えば、在庫回転率の算出が改善(在庫削減など)を目的とするのであれば、数量の方が良いでしょう。

その理由は、金額の場合は、同じものであっても価格変動するからです。(一物他価などといます)

分かりやすいのが、為替の影響を受ける輸入品です。

全く同じ開始在庫数・出庫数・終了在庫数だとしても、仕入れ時の金額が異なれば、在庫金額が増減します。(棚卸高の評価方法にもよりますが・・・)

そうなってしまうと、本当に改善によって改善ができたのかが正しく評価できません。

改善は、正しく評価できること(何によって、どれくらい改善できたのか)が大切です。

在庫回転率については、こちらの記事で詳しく解説しています。

在庫回転率を使って自社の適正在庫を定める方法もあります。

統計的な需要予測は、使用条件が厳しく、統計学的な専門知識も必要です。

しかし、在庫回転率を使った適正在庫計算方法は、手軽にできるので中小企業には使いやすい方法です。

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