
適正在庫とは、欠品せず、かつ過剰在庫にならない適正な在庫数のことです。
これまで、在庫管理の専門家として様々な企業の相談を受けてきました。
やはり適正在庫に関するご相談やお悩みが圧倒的に多いです。
適正在庫は需要予測やシステム導入だけでは解決できない
適正在庫が達成できない理由として、よくある理由は次の2点です。
- 需要予測が当たらないから
- システム化されていないから
適正在庫に需要予測は必須ではない
まず、需要予測ですが、「需要予測はそもそも当たらない」と思った方が良いでしょう。
さらに、中小企業が需要予測と言っているのは、「担当者の勘」か「過去の実績を見ているだけ」であり需要予測ではありません。
需要予測はもっと数学的でありシステマティックなものです。専門的な知識を持った人的リソースとそれなりの労力が必要です。
中小企業が需要予想に力を入れるのは現実的ではありません。その前にやることがたくさんあり、それらに力を入れた方が効果的です。
適正在庫にシステムは必須ではない
「高価なシステムが無いから、適正在庫は難しい」というのも大きな間違いです。
システム会社は、適正在庫を実現させる機能として、発注点や自動発注を上げますがこれも間違いです。
発注点や自動発注は単なる、発注の支援機能です。
皆様の身近には「エクセル」という強力な武器があります。データ分析や需要予測(あまり知られていませんが)も可能です。
いずれにしても、システムは単なる道具です。
考え方・仕組みが整ってこそ、システムは力を発揮します。
この記事では、自社の適正在庫を知る方法と維持する方法を解説します。適正在庫でお悩みの会社はまず最初にご覧ください。
もくじ
適正在庫の計算方法は2つある
適正在庫というのは、経営側が考える適正在庫と現場が考える適正在庫があります。
- 経営的観点:会社が理想とする財務状況を目指すトップダウン方式
- 実務的観点:現場の実情に合わせて決めるボトムアップ方式
経営視点の適正在庫は、「お金」がメインの視点です。一方で、実務的観点の適正在庫は、「モノ」がメインの視点です。
適正在庫(経営的観点)を計算する
2つの方法がありますが、改善の土壌が整っていない会社は、経営的観点「トップダウン方式」がお勧めです。
経営面から考えると、決算書が良い状態であることが大切です。
そのためには、ち密に在庫数を当てていくことよりも、適正な金額に収まることの方が優先事項です。
もちろん、適正な在庫数を当てることができれば良いですが、残念ながら至難の業で費用対効果が良いとは言えません。そこで在庫管理110番が提案するのが、適正な金額(在庫金額)を達成するための適正在庫です。
この方法では、在庫回転日数を改善して、会社が理想とする適正在庫金額に近づけていきます。
適正在庫の計算手順は次の通りです。
- 売上目標を決める
- 理想とする財務状態(=在庫金額を決める)
- 理想とする在庫回転日数を求める(=適正在庫)
在庫回転日数(在庫回転率)は在庫管理における最重要管理指標です。
在庫回転率は次の計算式で求めます。

- 在庫回転率 = 売上原価 ÷ 平均在庫金額
- 在庫回転日数 = 期間(日数) ÷ 在庫回転率
在庫回転率・在庫回転日数について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
売上目標を決める
売上原価は、売上から粗利益(売上総利益)を引いたものなので売上目標から計算します。
例えば、売上高1億円、粗利率30%であれば売上原価は3000万円です。もし、売上目標が分からない場合は、とりあえず前年度の売上原価で良いでしょう。売上原価は在庫管理担当者にはあまりなじみが無いですが、経理担当者に聞けばわかります。
在庫金額を決める
次に在庫金額を決めます。この在庫金額は会社として達成したい在庫金額が良いです。在庫削減目標があれば、
「現在の在庫金額-在庫削減金額=達成したい在庫金額」
ということになります。
売上原価と在庫金額が決まれば、適正在庫金額が決まります。
理想的な在庫金額の目安を知りたい
もし、理想とする在庫金額を決められないという場合は、次の表が参考になります。
これは業種別・売上規模別の売上、在庫金額、比率(在庫金額の売上に対する割合)、回転日数(在庫回転日数)の表です。
優良企業の回転日数が取り急ぎ目指すべき在庫回転日数と言って良いでしょう。

注目するのは赤色で囲った比率(売上高に対する在庫金額の比率)です。
これは、在庫が多いわりに売上が少ないということで、この比率が高ければ、高いほど赤字になる傾向が強いようです。
目安となる在庫金額の比率は、それぞれ次の通りです。
- 製造業:8%未満
- 卸売業:4%未満
- 小売業:4.5%未満
会社の目標在庫金額が決められない・・・という場合はぜひ参考にしてみてください。
上場企業の皆様は、決算書が公開されていますので業績の良い競合企業をベンチマークにしても良いでしょう。
同業や同規模の会社でも驚くほど在庫金額が小さい企業もあります。後述する適正在庫を実現する方法にも書きましたが、オペレーションやビジネスの仕組みを見ると、なるほどな・・・と思うところが多いです。
無料お試し版でまずはご利用しませんか?
【補足】資金繰りから適正在庫を計算する
在庫金額ではなく、資金繰り(運転資金)からも適正在庫を計算できます。
キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)とは、キャッシュフロー経営を重視する際には必須となる指標です。簡単に言えば、投資したお金が何日後に手元に戻ってくるかということを表した指標です。
例えば、CCCが90日の場合、今日100円で仕入を行った場合、その100円が戻ってくるのは約90日後ということになります。CCCは日数で表しますが、短い方が良いです。
ちなみにアマゾンは創業当初からCCCを意識した経営を行い、成長してきたことは有名で、現在欧米の企業では当たり前になりつつある経営指標です。
適正在庫金額を目指すために改善対象を絞り込む
適正在庫金額が決まれば、あとはその目標を目指して改善を進めるだけです。
目標が決まったのでこのような状態です。
目標在庫金額から求めた在庫回転率を当てはめます。

上記の場合、
現在庫(2,915,443)を目標在庫(2,000,000)にしたい。というのは言い換えると
在庫回転日数を56.5日にしたいということになります。
適正在庫にするためには、在庫を削減しなければいけません。
しかし、何千、何万とある商品や部品を適正在庫にする・・・ということを考えただけでも辛くなります。
そこで、次は改善の対象を絞り込みます。
何をどう減らせば良いのか途方に暮れてしまうでしょう。私も在庫管理をやっていましたので大変さはわかります。

全ての商品や部品の在庫回転日数を調べてA・B・Cの3つのグループに分類します。
- Aグループ:在庫回転日数が56.5日以下の在庫
- Bグループ:在庫回転日数が56.5日より長く113日以下の在庫(目安:適正在庫回転日数の約2倍まで)
- Cグループ:在庫回転日数が113日より長い在庫(目安:適正在庫回転日数の約2倍以上)
理論的に考えれば、全ての在庫回転日数が56.5日以下なら適正在庫金額になります。
つまり、改善対象はBとCグループに入った在庫になります。
こうすることで、効率よく改善対象を絞り込むことができます。
在庫管理110番が開催している在庫管理セミナーではここまで説明しました適正在庫の計算方法だけではなく、活用方法までさらに詳しく解説しています。
適正在庫の計算方法と活用方法がさらに詳しく分かる在庫管理セミナーの内容を見る
適正在庫(実務的観点)を計算する
次に実務的観点から適正在庫を計算する方法をご紹介します。
実務的観点から計算する方法は2つあります。
- 必要数から計算する方法
- リードタイムから計算する方法
まずは、必要数から計算する方法について解説します。
必要数から適正在庫を計算する
一番スタンダードな方法です。
適正在庫数を求める式は次の通りです。
適正在庫数 = 一定期間の需要数 + 安全在庫数
例えば、1日の平均需要数が10個、安全在庫が20個とすると30日間の適正在庫は、
適正在庫数 = 10 × 30 + 20 = 320(適正在庫数)
となります。
この式の中で重要なのは、「需要数」です。
この適正在庫の式を使う場合はどれくらいの需要があるのかをデータとして蓄積しておかなければいけません。
需要数は必ず変動するのでバッファー在庫として安全在庫を設定します。
安全在庫の計算式は次の通りです。
安全在庫=安全係数×使用量の標準偏差×ルート(発注リードタイム+発注間隔)
もし、新商品などで過去データが全くない場合(例えば新商品のような場合)は、モデルチェンジ品であれば、類似品の需要数などを参考にします。販売計画数が需要数の代わりになります。
この方法は、きちんと当たれば在庫のムダは無いです。しかし、よほど需要が安定した商材でない限り、授与予測は難しいでしょう。
需要予測は、専門的な知識を持った専門家じゃないとなかなか難しいです。(専門家でもそうそう当たるものではないそうです)
私はあまりこの方法を推奨していません。
適正在庫をリードタイムから計算する
実務的観点から適正在庫を計算するのであれば、おすすめはリードタイムから計算すると良いです。
その方法はとてもシンプル。
もし、あなたが
在庫を何のために持っていますか?と聞かれたら、
「お客さんの注文(納期)に間に合わせるため」と回答するでしょう。
つまり、自社が、仕入れからお客様に納品するまでのリードタイム(会社リードタイム)を適正在庫リードタイムとし、現在の在庫回転日数と比較すれば良いのです。

もし、「現在の在庫回転日数 ー 会社リードタイム」であれば、過剰在庫です。
会社リードタイムを知るためには、会社の中の重要なリードタイムを知り、それらの現状を調査します。
会社のリードタイムは3つに分類する

自社の適正在庫と今の最優先で取り組む課題が分かる
在庫管理の専門家が初心者にもわかりやすく解説
会社リードタイムを分解すると次の3つのリードタイムになります。
- 発注(仕入れ)リードタイム:材料を発注してから、工場に納品されるまでにかかる日数
- 生産(製造)リードタイム:生産に着手してから、生産完了までにかかる日数
- 出荷(納品)リードタイム:製品を出荷してから客先に届くまでの日数
この3つのリードタイムを合計した会社リードタイムです。
上記は製造業の会社リードタイムですが、加工や組み立ての無い業種(小売業・卸売業等)は、製造リードタイムを除く2つのリードタイム(仕入リードタイム・出荷リードタイム)が会社リードタイムになります。
上記3つの標準リードタイムを足したリードタイムが、おおよそ会社の適正な在庫日数です。しかし、これよりも在庫回転日数が極端に長い場合は、在庫の持ちすぎと考えれます。
適正在庫を実現するための実際の改善
目標が決まれば改善です。ここでは、改善の目の付け所をご紹介します。
適正在庫へのアプローチは大きく分けて2つの方法があります。
- リードタイムの短縮
- 変動(ばらつき)を少なくする
そして、具体的な改善ターゲットは次の3つです。
- 仕入れ(仕入先)
- 生産
- 市場
仕入先改善の視点
仕入先が適正在庫を阻害する要因となるのは、
- 発注リードタイム:発注リードタイムが長い。
- 発注ロット:発注ロットが大きく、必要な量だけ買えない。
- 納期遅れ:指定した納期に材料や商品が入ってこない。
- 不良:納入された材料や商品が不良で、数が減ってしまう。
そもそも発注リードタイムが決まっていないという会社が多いようです。
1と2に目が行きがちですが、まずは3にしっかりと着目しましょう。
納期が遅れがちな仕入先への発注数は、どうしても多くなりがちです。
そのために、発注リードタイムを決めて、仕入先が指定した納期を守っているかどうかを「納期遵守率」という指標を設定して管理します。
生産改善の視点
生産の改善の視点は、次の2つに分かれます。
- 生産能力
- 生産方式
- それ以外
生産能力
商品を生産する工場には生産能力があります。
原則として単位時間当たりの生産能力を超えて生産をすることはできません。
そこで、生産の前倒しが必要になります。
- 工場の生産能力は1日に50個
- お客からのオーダーが500個(要求納期は4日)
この工場の生産能力では、4日で200個しかつくれません。顧客の要求を守るためには、余分に300個を持っておくのが適正と言えます。(在庫日数に換算すると6日分の在庫)
お客から生産能力を超える注文が続く場合は、次の3つのうち
いずれかが必要です。
- 前倒しで見込み生産を行う
- 生産LTを短くする
- 生産能力を増強する
最初は、前倒し生産を行い在庫を積むのが緊急対策になります。しかし、これを行っていると在庫がどんどん積みあがっていくので、本質的な改善として、生産リードタイムを短くしなければいけません。
生産能力の増強は最後の手段です。安易に実施してはいけません。
生産方式
製造業の場合は、生産方式によって適正在庫の設定が変わります。
生産方式は大きく分けて2つあります。
- 受注生産:注文を受けてから生産を開始する
- 見込み生産:注文を見越してあらかじめ生産をして在庫を持つ
受注生産では在庫は不要ですが、見込み生産は予め生産して在庫を持っておく必要です。
つまり、生産方式によって、適正在庫量が変わるのです。
仕掛品を戦略在庫で効果的に持つ(デカップリングポイント)
さらに製造の途中の状態(仕掛品)で在庫を持つことも可能です。
どの状態で在庫を持つのかということをデカップリングポイントと言います。
生産方式を変えて在庫を削減して事業が復活した事例で有名なのは、アメリカのパソコンメーカーのDELLです。

DELLはパソコン(完成品)を見込み生産して在庫を持って販売する方法(STS)から、部品在庫を持っておいて、注文を受けてから組立出荷する(BTO)という生産方法に変更しました。
デカップリングポイントに関する詳しい解説はこちらをご覧ください。
☞デカップリングポイントとは?
生産リードタイムが伸びてしまう原因
生産リードタイムが伸びてしまう原因は、次のような事です。
- 機械故障:生産能力が落ちてしまう。
- 欠員:生産能力が落ちてしまう。
- 廃棄ロス(歩留り、不良):できる予定の数量ができあがらず、余分に
生産しなければいけなくなる。 - 段取り:生産以外に時間が取られ、予定よりも生産リードタイムが長くなってしまう。
- モノの移動:生産以外に時間が取られ、予定よりも製造リードタイムが長くなってしまう。
- 生産ロット:必要以上に余分に作ってしまう。
- 各種事務処理:処理待ちで生産が止まる。
- ミス:指示数や出来高数が違う。
これらの中で自然に解消するのは欠員くらいで、それ以外の要因は自然に良くなることは無いです。むしろ放置するとにより拡大する傾向があります。これらはすべて4Mの何らかの不調によるものです。
需要予測に頼ってはダメ
適正在庫と言えば、「需要予測が必要」と考える方は多いのではないでしょうか?
ここであなたに1つ質問です。
世の中には需要予測をする方法がたくさんあります。なぜたくさんあると思いますか?
正解は「当たらないから」です。
私がある大学教授に「需要予測はいろんな方法があるのはなぜですか?」という質問をしたところ、上記のような回答でした。
もし、当たるのであれば、そんなにたくさんの方法は必要ない・・・とおっしゃっていました。
さらに、いろんな方法があるので、その中から条件に応じた適切な方法を選択しなければいけない
ともおっしゃっていました。
専門の研究者や統計学の知識に長けた人であればできるかもしれませんが、一般の社会人はそんなトレーニングは受けていません。
需要予測は過去から推定する
需要予測は次のように定義されています。
特定の商品の需要 動向を決める各種の要因とその需要に与える影響を分析し,これをもとに市場調査や 各種の予測結果を考慮して将来の需要を予測すること。
これは、どういうことかというと、「過去に起こったことと全く同じことが起これば、将来も全く同じことが起こる」というのが需要予測の原則的な考え方です。
今のコロナのように過去に起こったことの無いことが起こると、需要予測は無力です。
コロナの影響を受けていなくても、市場動向が変わったり、販売方法を変える(例えば対面販売だけではなくEC販売も行う等)けでも過去に構築した需要予測モデルを修正しなければいけません。
強いて需要予測をしやすいものを挙げるとすれば、次の2つの条件を満たしたものです。
- 比較的長い間売れ続けている定番品
- 需要変動に与える要素が比較的わかっていてその通りになりやすいもの
需要予測の詳しいやり方に興味がある方は、こちらをご覧ください。
市場変化を捉える
市場が要因になるのは、季節変動や流行、嗜好、法律改正等に関連することです。
例えば、次のような事です。
- 定期的な需要変動:アイスクリームの需要
- イベント・行事:お正月、クリスマス、祭り
- 一時的な需要変動:テレビ番組に取り上げられ、一時的に殺到
- 消費税増税:増税前の一時的な消費の盛り上がり
注意しなければいけないのは、「適正在庫にならない=市場が悪い」と短絡的に考えないことです。
市場については、自社ではコントロールできません。
経済動向を注視するとともに、在庫データをとり変化を見逃さないようにします。
適正在庫を維持する
適正在庫は一度設定したら終わりではなく、状況に応じて定期的に見直さなければいけません。
例えば、周期的な変動やイベント・行事に合わせて動く商品であれば、その動向に合わせて、設定を変えなければいけません。
また、商品寿命の観点で長期的なトレンドを見る必要もあります。
過剰・滞留在庫を見逃さずに管理する
私は以前コンサルティングした会社で、いわゆる定番と呼ばれる商品の90%以上が、商品をリリースしてから2年間かけて緩やかに需要が落ちているという事実を需要データから突き止めました。
しかし、その会社は商品投入当初に決めたことをずっと変えていなかったので、徐々に販売が落ちると同時に在庫がどんどん増えていっていることに気づかず、慢性的な過剰在庫の状態に陥っていました。
適正在庫の維持は過剰・滞留在庫の管理がカギを握っています。
欠品は過敏に反応しますが、どうしても後手になってしまうのが過剰在庫・滞留在庫です。
欠品は「在庫が無い」という情報で気づくことができますが、過剰・滞留在庫はそういった情報が出てこないので気づけません。その結果、ヘドロのように静かに溜まっていきます。
過剰・滞留在庫は手を打つのが遅くなればなるほど、処分しにくくなるなど対策が打ちづらくなります。
早めに見つけることがポイントです。
例えば、1か月に1回、6か月に1回など期日を決めて、リストアップして定期的に処分するなど手を打ちます。
ここで活躍するのも在庫回転日数です。決めた適正値を超える品目を補足できれば、過剰在庫を未然に防げます。
しかし、何千・何万とある品目をその都度手動で調べるのはとても手間がかかり大変です。
こんな時に役立つのが在庫管理システムです。
予めお知らせ機能をプログラミングして組み込んでおけば、自動でお知らせしてくれます。
弊社の在庫管理システム「成長する在庫管理システム」は、適正在庫を維持するために品目の特性に応じた3つのお知らせ機能を用意して過剰・滞留在庫を防ぎます。
無料お試し版でまずはご利用しませんか?
トラブルの頻度を見積もる
現実の世界では、想定外のトラブルが起こります。
例えば、
- 仕入れ先の納期遅れ
- 仕入れ品の不良
- 生産遅れ
- 生産設備のトラブルや不良の発生
- 交通渋滞や自然災害
- 納期短縮
こういったトラブルを吸収するために在庫をもつ必要があります。先にあげた納期遵守率のようなデータをしっかりと蓄積して客観的に決定します。経験と勘だけでむやみに決めてはいけません。
需要の周期性(季節変動)
トラブルのほかに、商品需要の周期性があります。
例えば、アイスクリームであれば夏に売れ行きが良く、冬は悪いのが一般的です。
このように、季節変動などの周期性がある場合があります。
アイスクリームの1月の適正在庫量と8月の適正在庫量は違います。
つまり、周期的な変動に合わせて見直しが必要ということです。
トラブルと周期性を見積もるためには、日々のデータの蓄積が欠かせません。
適正在庫と安全在庫との違い
適正在庫とともに、在庫管理でよく聞くのが安全在庫です。
この2つが混同されがちですが、全然違います。
安全在庫とは欠品を防ぐための在庫で、在庫の下限値になります。安全在庫の求め方はこちらでご確認ください。
一方で適正在庫は、欠品とともに過剰在庫を見ています。したがって在庫の下限値とともに
上限値も設定するのが、適正在庫と言えます。
自社の適正在庫と設定方法の手順(まとめ)
適正在庫の設定方法を解説しました。
- 経営的観点から適正在庫を決める
- 目標とする在庫金額(運転資金)を決める
- 在庫回転率の式に1を当てはめて目標の在庫回転率を求める
- 現在の在庫回転日数を目標値に近づけるために改善する
- 実務的観点から適正在庫を決める
- 自社の会社リードタイムを調べる
- 在庫回転日数を比較する
- 理想の会社リードタイムに近づけるために改善する。
在庫管理セミナーでは、経営的・実務的観点からの適正在庫の求め方、1000万円削減を実現した改善事例をもとに、適正在庫と誰でもできる仕組みづくりについて学べます。

適正在庫は会社が戦略的に決めるもの
適正在庫に決まった定義はありません。
例えば、トヨタ自動車は在庫を持たないという方針ですが、トラスコ中山は在庫を持つことが方針です。
会社によって方針が違います。今回解説した適正在庫の考え方をベースにして、自社の適正在庫がどうあるべきか?
ということを考えるべきです。
適正在庫に関するご相談・お問い合わせ
自社の適正在庫をどのように設定したらいいのかわからない、適正在庫を設定してみたが本当に良いかどうかが分からない・・・
といった適正在庫に関するご相談はこちらからどうぞ。