アイリスオーヤマを事例に在庫管理を週次でやる理由をご紹介します。
アイリスオーヤマは、売上4200億円を超え業界最大手の企業です。
しかし、会社法上の大会社の要件である「資本金5億円以上」(資本金1億円)「負債200億円以上」は満たしておらず、いわゆる中小企業に分類される会社でです。問屋機能を併せ持った製造業いわゆるメーカーベンダーとして、特異な存在です。
アイリスオーヤマの週次管理
トップからスタッフまで週次で管理している点は注目に値します。
毎週月曜日に新商品開発会議を開き、生活者目線で新商品アイデアを議論します。会議には商品開発に関わるあらゆる部門の社員が一堂に会し、情報を共有することでスピーディな商品化に繋げています。2017年の総売上高に占める新商品(発売から3年以内の商品)の売上高の割合は64%と高く、常に不満解消型商品の市場投入、勢いのある会社です。
またオペレーションに関しても、週次サイクルを徹底しています。
通常、どの企業も規模の大小に関係なく、売上は日次で確認し、営業会議、生産会議と週次で実施している企業が多いと思いますが、アイリスオーヤマの週次サイクルはどの企業にも参考になるのではないでしょうか?
週次で取得する実売データ
自らメーカーでありベンダーであるため、全国1万3000店以上の小売店舗から上がってくる販売データが蓄積されます。
その販売データは週次で過去3年分を用いて分析されます。
月次でなく週次で取っている理由は、ホームセンターの来客が週末に集中しており、月一括のデータではお客さまの購買動向は見えてこない、という観点からデータ集積においてもお客さま目線を徹底させるためです。
週次で立てる需要予測と生産計画
販売データを基にシミュレーションをかけ、分析を行って商品特性ごとの売上トレンドを探ります。
さらには生産管理や新製品開発、そして需要予測にも役立てています。
需要予測に使用されるデータは、各商品の週別店舗別商品別の売上実績と、週別の導入店舗数実績、週別の一店舗あたりの販売数実績の3種類です。
計算した数値と実際の販売数の差が大きい場合は、天候などの要素を考慮した上で、手動で修正をかけています。
需要予測の精度
需要予測の精度は約45%(出荷金額と販売予測金額の差の絶対値を発注時の販売予測金額で割り、1から引いた値の%表示)。
個別に見ると数字にムラがあり、生産リードタイムが短い国内製品は精度が高く、海外工場で生産する製品の場合は生産リードタイムが長いので精度は落ちるとのことです。
ただし、この45%はベンダーを介さずに小売店との需要予測であるため、一概に低いとはいえないでしょう。
【需要予測・計画に関する記事】
変化対応力
45%の需要予測に対して、どのように対応しているのでしょうか? 小売店のオーダーに基づいて、ストレスなく使える便利な商品をいかに店頭に正確に届け、品切れを防止するかがアイリスオーヤマの指針であります。それは堅牢な現場力、生産、物流の変化対応力と営業の機動力にあります。
工場の機能
全国に9つの工場があり、すべてベンダー機能を有するため、工場内の倉庫は小売店のオーダーに合わせてタイミングよく出庫するためのベンダーとしての在庫でもあるため、早くから自動倉庫を導入しています。工場も倉庫も24時間態勢ですが、繁忙期に供給が間に合わないというリスクに鑑み、稼働率の上限を70%に抑え、50%前後の予測の振れを吸収しています。またプラスチック製品に関しては金型を揃え、工場間で共有することで保管コストと運送コストの削減を図っています。
物流費は原価管理、物流倉庫は工場の一部
アイリスオーヤマは運賃を経費としてはみなしません。
製造原価と同じように原価管理を行っています。そのため、すべての工場は物流に適した場所にあります。その理由は、土地の価格が安い、原材料が調達しやすい、人材も確保しやすいといった工場に適した条件よりも、いかに商品をスムーズに流せるかという物流面での条件を最優先して立地を選んだ結果、国内のすべての工場はどれも、インターチェンジ近くの交通の便のよい場所にあり、取引のある小売店に日帰り配送できるよう、半径100~300キロメートル内の「1日配送圏」。正に物流センターの中に工場があるといえます。
営業は情報の宝庫
営業に関しては、全国に営業所を配置し、物流センターを構えており、商品導入から店舗への納品まで一貫したオペレーションが可能です。また、SAS(店頭販売支援スタッフ)を全国のホームセンター約800店舗に配置しており、納品から販売に繋がる店頭までのサポート体制が整っています。またお客様の不満・要望を聞き出して商品開発部門にフィードバック。
アイリスオーヤマの強みは、製造から小売までのトータルを把握した上で、週次オペレーションを実践している点にあります。
高井先生の記事一覧
この記事の執筆した高井先生はCCC(キャッシュコンバージョンサイクル)
やPSI管理などに関する経験と深い知見を有しており、当サイトに数多くご寄稿いただいてます。
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